金沢医科大学病院 耳鼻咽頭科外来 検査室
金沢医科大学病院様の耳鼻咽喉科には、国内では数少ない嗅覚・味覚外来があり、嗅覚、味覚障害など感覚器の治療にあたっておられます。
取材協力:三輪高喜教授、米田紀子さん、中村久子さん
お客様概要
金沢医科大学病院様は(1)一般病院では困難な高度な医療の提供(2)医学進歩のための高度な医療技術の開発と評価(3)良医育成のための高度な医療に関する臨床研修を行う病院として昭和49年に開院。
北陸地方最初の特定機能病院の指定をうけ地域の基幹病院として、最新設備・技術を駆使した高度な医療サービスを提供し日々多くの患者様の診療・治療に従事。
また、地元の医師のロールモデルの役割を担っており、医学研究の進展や優れた人材の育成に力を注ぎ、地域医療のさらなる技術向上に貢献。
利用製品
T&Tオルファクトメーター(当社製品以降T&Tに省略)を用いて、基準嗅覚検査を行っている。
導入場所
嗅覚障害について
人間は数百から数千種類のにおいをかぎ分けられるのではないかと言われているが、嗅ぎわける力、においを感じる力に異常が起きる症状が嗅覚障害と呼ばれる。
障害の種類は大きく3つに分けられ、においの感じ方が弱くなる嗅覚低下、においが全くしなくなる嗅覚脱失、違うにおいがしたりどれも同じに感じる異嗅症などがある。
嗅覚障害の引き金となる要因のおよそ40%は、鼻の病気が原因と言われている。原因によっては完治するものもあるので、発症したら早めの受診が大切である。
においを感じるメカニズム
においの元となるのは空気中にあるにおい分子。
そのにおい分子が鼻の穴に入り、脳に伝わり、においとして認識される。
検査方法
検査は、外来診察室の一角に設けた検査室にて患者と医師(検査者)が1対1で行う。
検査者は医療用の手袋、マスクを装着し、他のにおいがしないよう配慮している。薄い濃度のにおいから始め、1段階ずつ濃い濃度を提示していき、どの段階でにおいがわかるかという検査。
以前検査を行ったことのある患者は、前回値を参考に、検査を行う。
検査手順
検査手順は下記の流れになる。
- ニオイ紙に臭素を付け、すぐにフタを閉める。
- 患者にニオイ紙を渡し、鼻から1~2cmくらいのところで2~3呼吸嗅いでもらう。
- におい有無と、どのようなにおいかを質問する。
- A→B→C→D→Eの順に検査を行い、1レーン終了後に次のレーンを行う。
検査の所要時間はトータルで15分程度で、検査の実施頻度は年間約400件。
また、検査室ににおいがこもるため、脱臭装置(品名:SD-1)を使用して検査を実施。
検査の際の注意点
検査の際に注意している点として、 一生懸命嗅がせすぎると余計にわからなくなるので、手際よく検査を進めていくこと、鼻にくっつけないように、指導することなどがある。 また、次の患者を検査室へ通す際には、部屋のにおいが消えるまでインターバルをおくことが必要。域値が1や0付近にある人は感度が良いので、部屋のにおいには特に気を遣っている。
時間帯によって鼻の通りが変わることで感度が違ったり、においの種類毎に域値が変動することもあると思われるが、繰り返しによる精度の差はないと考えている。
効果
嗅覚障害の程度判定、治療効果の判定に有用である。
問診や内視鏡観察と合わせれば、治療方針を決定するための重要な指標となる。嗅覚障害は放置すると治りが遅くなる場合があるので、早めに診断を受けることがすすめられている。
また、近年注目されているパーキンソン病やアルツハイマー病は発症の数年前に嗅覚障害がおこることがあり、早期診断として嗅覚検査の有用性が示唆されている。いずれも難病で根本的な治療法は確立していないが、早期発見により進行を遅らせる道が期待されている。
改善してほしい点
- 脱臭装置SD-1の動作音を静かにしてほしい。
- 脱臭装置の効果がさらに上がると良い。
- におい漏れを防ぐため、キャップを改良してほしい。
- 対照液専用の置き場があると良い。